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東愛知新聞
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中部経済新聞
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東日新聞
2007年10月連載記事
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東日新聞
2007年2月連載記事
「プロが中小支援」
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2005年4月13日掲載
個人情報保護法
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東愛知新聞
2005年4月5日掲載
個人情報保護法
「中小はどう対応すべきか(下)」
東愛知新聞
2005年4月6日掲載
「東南アジアの
自動車リサイクル事業(上)」
東日新聞
2005年2月23日掲載
「東南アジアの
自動車リサイクル事業(下)」
東日新聞
2005年2月24日掲載
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人事労務管理の最新記事

不況を乗り切るための労務対策-6


6.賃金カットの具体的方法
不況による業績悪化により、賃金引き下げに踏み切らざるを得ないケースがあります。

賃金引き下げを行うには、順序があります。

まず、経営責任を明らかにし、率先垂範する意味で、役員報酬の削減は避けられません。役員がこれだけ報酬をカットするという事実を示した上でなければ、賃金引き下げに対する社員の納得性を得るのは困難であると考えられます。役員報酬の減額は、上位役職者ほど減額率をアップさせるのが通例です。

その次に来るのが、社員の賞与の減額です。一般に、賞与は金額が約束されておらず、あくまで業績次第で支払うものであるという前提があります。

賞与での調整だけでは十分でない場合、月例給与の減額にまで踏み込むことになります。場合によって、手当類の見直しもあわせて行うケースがあります。手当類の見直しは、会社が社員に対して支払う手当の考え方を今一度整理した上で行う必要があります。

支給趣旨が不明確な手当は意外に多いものです。また、そもそも労働の対価とは言えない家族手当や通勤手当、有給休暇制度が浸透した現在においてはやや意味が薄れている精・皆勤手当も、場合によっては見直しの対象となります。また、役員報酬の減額と同じ意味で、管理職に対する役付(管理職)手当の減額を行う場合もあります。

しかし、手当類の見直しによる対応は、特定の社員に減額の負担が偏るケースが多く、合計金額も小規模になりがちです。したがって、手当類の見直しは、現在の賃金体系の不合理性を是正する意味で行うことが、正しい対応と考えられます。

大きくコストダウンするには、この範囲にとどまらず、基本給の減額に踏み切らざるを得ません。


6.賃金カットの具体的方法(2)
基本給の減額は、全社員に向けて一律に行う方法と、個別に減額幅を査定して行う方法があります。

一律カットは、社員が一致団結して不況に向かうという概念がわかりやすく、「みんなで渡れば怖くない。」ということもあって、この方法がとられがちです。しかし、結果として現在の給与水準の不均衡をさらに助長することになりかねません。

中でも、定額カットという方法はとるべきではありません。月給50万円の社員も、20万円の新入社員も同じ1万円のカットでは、まったくもって不合理です。

定律カットという方法は、ある意味納得性があります。例えば全員5%となれば、月給が高い人は多くカットされることになりますし、少ない人は少ない金額がカットされるので、合理性があると感じられます。

確かにそうですが、現在の給与水準の矛盾はそのまま持ち越されます。給与水準は、そもそも様々な矛盾を抱えているケースがほとんどです。通常では中々できない給与の減額を行うのであれば、それを機会に少しでも矛盾を是正することを考えるべきです。

全員が一定金額減額して危機感を共有すべきとすれば、まず低い率で一律カットします。その後、能力・役割に比べ相対的に給与水準が高い社員について、個別に減額幅を査定します。等級制度がある場合は、等級の中の上限給与を超えている社員については、上限まで引き下げ、逆に下限給与を下回っている社員については、下限までの昇給を行うことで処遇の不平等を調整します。

等級の上限下限の間にある通常の社員についても、その給与額の位置により減額幅を比例的に変えていくことで、実力以上の給与格差を是正することが可能となります。


6.賃金カットの具体的方法(3)
賃金規程には、一般的に「昇給」という条文があります。最近では、これを「賃金改定」と表現することが多くなっています。給与は上がるだけでなく、下げる場合も想定しなければならないからです。

かつて大企業において主流であった職能資格制度では、賃金水準は能力によって規定され、能力が上がれば仮に職務が変わらなくても昇給するという運用がされていました。また、一度上がった能力は下がらないという考え方により、職能給の降給はないという前提がありました。

今も、能力主義を人事制度の根幹に置く企業は多いわけですが、最近では能力を潜在能力ではなく発揮能力で見るという考え方が主流になっています。発揮能力は下がることも当然ありますので、その場合は、当然降給することになります。したがって、発揮能力基準を取る場合は、賃金が下がる可能性も社員に示した上で、賃金規程の条文は「昇給」ではなく、「賃金改定」としなければなりません。

また、賃下げは、それを一方的または恣意的に行うと、労働条件の不当な引き下げと判断される恐れがありますが、人事評価制度の体系的なしくみの中で行われた場合は、その可能性は低くなります。

非正規雇用の労働者の賃金水準をどうするかという問題もあります。賃下げをパートタイマーなどにも及ぼすというケースもありますが、これにはあまり賛成できません。

非正規社員は、そもそも労働コストでみればきわめて低い水準であることが多く、むしろパートタイマー等の能力を今後一層活用してく必要があります。安易に一律引き下げの範囲を非正規雇用労働者にまで広げるべきではないと考えます。


不況を乗り切るための労務対策-5


5.整理解雇(1)
整理解雇は、経営上の必要性から行う人員削減の最終手段です。元来、雇用契約は使用者、労働者のどちらからでも解除でき、使用者側からの解除が解雇になります。しかし、現実には過去の裁判において、高度の必要性・合理性がない解雇は無効とされてきました。

また、平成20年3月施行の労働契約法でも「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。

整理解雇の正当性を判断する基準として、一般的に「整理解雇の4要件」と呼ばれるものがあります。「人員整理を行う業務上の必要性があるか」、「解雇回避努力を行ったか」、「解雇対象者の選定に合理性があるか」、「手続きの相当性、つまり労働者、労働組合などと誠意をもって協議を行ってきたか」という内容です。

人員整理の必要性については、一般的には単に合理化を図る必要があるという程度では弱く、倒産回避のために緊急に人員整理を行わざるを得ないといった高度なレベルの必要性が求められます。

解雇回避努力については、役員報酬削減、賞与支給停止、休業・操業時間短縮、賃金引き下げなどのコスト削減努力がその前提として求められます。また、配置転換、出向、転籍も解雇回避努力として重要な役割を果たします。休業・操業時間短縮に関しては、雇用調整助成金あるいは中小企業向けの中小企業緊急雇用安定助成金を活用することは、当然の対応であると考えられます。

また、希望退職の募集や退職勧奨など、解雇によらない人員削減努力を行ったかどうかも問われるところです。


5.整理解雇(2)
「解雇対象者の選定に合理性があるか」は、整理解雇の正当性を判断する「整理解雇の4要件」の一つです。解雇対象者の選定は、整理解雇の実施にあたり最も気を遣うところです。選定にあたっては、一定の合理的な基準が必要で、なおかつその基準が公平に適用されなければなりません。間違っても、好き嫌いにより人選するようなことがあってはなりません。

基準の一つとして、雇用形態による区分は一定の合理性があるとされます。つまり正社員の雇用は守り、パートタイマーや期間雇用者などの非正規社員の解雇を優先するという考え方です。正規社員と非正規社員の格差是正が叫ばれていますが、日本の雇用慣行においては正規社員の雇用を優先する考え方は根強いものがあります。

会社への貢献度をもとに判断するという基準も有効です。能力・人事考課の結果、業務遂行上必要な資格の有無、出勤率、懲戒の有無などです。

生活への影響度も合理的な選定基準の一つとされています。解雇されることにより、その労働者、家族がどの程度の影響を受けるかを考え、生活に困らない者を選定するというものです。

そのほか、コスト削減の目的で、人件費の高い者を選定するという方法も、場合によっては合理的であると見なされます。

これらの基準に従い、候補者をリストアップしていくことになりますが、基準にはそれぞれ矛盾する項目もあるので、その優先順位を明確にしなければなりません。

なお、退職勧奨に応じなかった社員は当然解雇の候補者になると考えられますが、それらの社員についても、こうした基準をあてはめて解雇の是非を判断していくことになります。


5.整理解雇(3)
整理解雇は、人員整理の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続きの相当性の4つの要件を踏まえて行う必要があります。そのうち最後の「手続きの相当性」は、「労働者、労働組合などと誠意をもって協議を行ってきたか」というものです。

裁判例でも、「使用者は労働組合または労働者に対して整理解雇の必要性とその時期・規模・方法、整理解雇者の選定基準等につき納得を得るために説明を行い、さらにそれらの者と誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負う」とされています。

整理解雇に至るプロセスを問うているわけで、この考え方は整理解雇だけではなく、労働条件の不利益変更や懲戒処分の合理性が判断される際にも登場します。

なお、プロセスに関しては、労働組合がある場合とない場合とでは大きく異なります。特に使用者と労働組合との書面による協定(労働協約)に、労働条件の不利益変更に関する事前協議の規定がある場合は、その手順を踏まなければなりません。

ただし、合意がない場合必ず解雇が無効になるというわけではありません。誠意を持って交渉し、同意を求める努力をすることが最低限必要であると考えるべきです。

少数組合特に企業外の合同労組等への加入者が整理解雇の対象者となる場合は、さらに慎重に対応する必要があります。外部組合の場合は、特に団体交渉の日時設定にも手間がかかりがちであると同時に、主張や行動も激しいケースが多く、対応に苦慮することも考えられます。しかし組合を通さずに直接事を進めるのは、「労働組合への支配介入」=「不当労働行為」であると主張される恐れもあります。

いずれにしても、誠意を持って対応するしかなく、そのためには手続きに3カ月程度の期間は必要であると考えられます。


不況を乗り切るための労務対策-4


4.人員削減のための退職勧奨
希望退職の募集を行っても、退職者が予定数に満たない場合、最終的には指名解雇(整理解雇)を行うことになりますが、解雇を行う前に退職勧奨を行うことが一般的です。

解雇と退職勧奨は全く異なる行為です。解雇は使用者が一方的に雇用契約を解約する行為ですが、退職勧奨は、使用者が労働者に対して働きかけ、合意により雇用契約の解約を求める行為です。退職を強制しないことにおいては希望退職の募集と同じですが、応募を待つのではなく、積極的に退職を働きかける点が希望退職の募集と異なっています。

ただ、その行い方によっては違法性が生じる場合があるので注意が必要です。脅迫などはもちろんのこと、長時間にわたる面談や、執拗に退職を迫る行為などがあった場合、違法な退職の強要とみなされ、不法行為にあたるとして損害賠償請求の対象となることもあります。

実務的には、話し合いは30分程度、回数も最高で3回程度が限界と考えられます。また、労働者に自由に意思決定してもらうことが前提ですから、使用者側が多人数で圧力をかけるなど、退職を強要するような雰囲気は禁物です。

希望退職の募集と同様、退職勧奨においても、それに応じてもらうためには割増退職金の支払いなどの好条件が必要と考えられます。しかし、好条件を示せば納得するだろうと思うのは危険です。人員削減の必要性を理解してもらい、会社存続のために協力していただくという姿勢が必要です。

また、できる限り労働者の意見を引き出すことが必要です。退職勧奨の対象となると、プライドが傷つけられ、感情的な軋轢も生じます。労務トラブルを避ける意味でも労働者の意見や不満には十分耳を傾けなければなりません。


不況を乗り切るための労務対策-3


3.希望退職の募集
売上減が当分の間続くと考えられる場合、休業・操業時間短縮だけでは対応しきれず、整理解雇を行わざるを得ないケースが出てきます。しかし、整理解雇に至る前に希望退職の募集や退職勧奨などを行うことが一般的です。解雇は最後の手段だからです。

希望退職の募集は、割増退職金の支払いなどの好条件を示すことで、自主的な退職申し出を募ることにより実施します。その際、年齢や部門などにより、対象者を限定したり、退職金の割増率を変えたりすることは可能ですが、性別や国籍などにより区分することは許されません。

辞めてもらいたくない社員の退職を防ぎたい場合は、あらかじめ「割増退職金の支給は会社が認めた者に限る。」と明示しておく必要があります。ただし、この限定により応募自体が少なくなる可能性があります。また、割増退職金を受け取らない通常の退職まで制限することはできません。

希望退職への応募が目標数に達しない場合、二次募集を行う必要も出てきます。通常、二次募集では退職金の割増率を上げていきますが、その場合は、一次募集への応募者に対しても割増率を上げなければなりません。

希望退職の募集にあたっては、割増退職金の支払いといった好条件の提示とあわせて、目標人員に達しなかった場合に退職勧奨を行うこと、最終的には指名解雇を行う可能性があることも明示することで、人員削減の実効性を確保していきます。

なお、希望退職の募集や退職勧奨に応じて離職した場合、雇用保険の失業給付については、解雇による離職の場合と同様に特定受給資格者として取り扱われ、給付日数等において優遇されます。


不況を乗り切るための労務対策-2


2.賃金引き下げ
不況を乗り切るために、賃金引き下げを行わざるを得ないケースがあります。
賃金引き下げは、労働条件の不利益変更の中でも、労働者に与える影響が最も大きいものであり、高度の合理性が要求されます。

労働条件の変更については、平成20年3月に施行された労働民法とも言うべき労働契約法で次のように規定されています。「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」(第8条)

労働条件は、合意により変更することが必要です。逆に言えば、合意すれば変更が可能です。したがって、労働者の同意が得られるならば、賃金を引き下げることは可能です。その合意を証拠として残し、後日のトラブルを避けるために、労働条件通知書兼同意書を取っておくことをお勧めします。

では、合意が得られない場合は労働条件の引き下げはできないのでしょうか?

労働契約法第10条で、「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉 の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」とあります。

就業規則の変更により労働条件を変えるとは、使用者側が一方的に労働契約の内容である労働条件を変更するということです。賃金引き下げのような労働条件の不利益変更でも、引き下げが必要であり、その程度が大きすぎず、引き下げ後の賃金が世間相場から見て相当であり、誠意をもって労働者と交渉したというプロセスがあれば、その変更に合理性があると判断されるという考え方を示しています。


不況を乗り切るための労務対策-1


1.休業・操業短縮
労経営環境が劇的に悪化しています。

製造業を中心に、急激な受注の落ち込みが進展しており、対前年比3割~7割減の状態もめずらしくありません。こうした状態の中で、経営破綻しないため、緊急避難的に休業や操業時間短縮を行い、人件費の削減を行なわなければならないケースがでてきています。

会社都合の休業については、労働基準法上、休業日ごとに平均賃金の6割を支払う必要があります。平均賃金の計算方法は労働基準法で規定されており、過去3カ月に支払った賃金総額(賞与は除く)を3カ月の暦日合計で割った金額になります。その金額は、通常一日あたり支払う金額の7割程度になります。休業手当はその6割ですので、結果として通常一日あたり支払う金額の4割強となります。

休業手当は1日あたりで定められていますので、仮に操業を半日に短縮し、賃金を2分の1支払った場合、これで通常一日あたり支払う金額の4割強という水準を超えますので、労働基準法上その日に関しては、それ以上の休業手当を追加で支払う義務はありません。

ただし、休業手当の支払いは、あくまで労働基準法で定められた最低限の対応であり、これにより罰則はまぬがれますが、労働者は民事上100%の賃金請求権を持っています。争われるケースもありうるので、やはり十分な説明と理解が必要となります。

なお、休業手当を支払う前提として、まず不就労に対して賃金を欠勤控除し、その上で休業手当を支払うことになります。したがって、就業規則(賃金規程)において、欠勤控除の方法、具体的な算定式を明確にしておく必要があります。

また、今回の不況対策として、休業手当に対する助成金「中小企業緊急雇用安定助成金」が創設されました。この受給をあわせて検討すべきです。


業種別労務管理のポイント-5


運送業の労務管理(1)
運送業の労働時間管理に対し、国土交通省ならびに労働基準監督署の指導が非常に厳しくなっています。背景には、長時間労働を背景とした交通事故つまり労働災害の多発があります。トラック運転手は、長時間労働になりがちで、これを防ぐため、国は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を設けています。

運送業者は、運転者の拘束時間、休息期間及び運転時間について、労働基準法の労働時間等の規制の他、この基準を守る必要がありますが、その要点は以下のとおりです。

まず拘束時間は、1カ月で293時間以内です。ただし、労使協定があるときは、1年のうち6カ月までは、1年間の拘束時間が3516時間を超えない範囲内において、320時間まで延長することができます。1日の拘束時間は、13時間以内です。

この拘束時間を延長する場合であっても、最大拘束時間は、16時間以内としなければなりません。このケースでは、1日の拘束時間が15時間を超える回数は、1週間で2回以内です。

勤務終了後は、継続8時間以上の休息期間を与える必要があります。

運転時間は、2日を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間以内とする必要があります。また、連続運転時間は、4時間以内とする必要があります。

休息期間については、運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所での休息期間より長くなるように努めなければなりません。

ただし、運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合や、隔日勤務に就く場合、またはフェリーに乗船する場合には、上記についての例外も定められています。

運送業の労務管理は、労働時間管理とそれに対応した賃金制度の構築が重要なポイントとなります。


運送業の労務管理(2)
運送業では、ドライバーの人件費が燃油とともに運送原価の大きな割合を占めます。

ドライバーの賃金制度については、基本給・諸手当を設定して、所定労働時間を超えた分については、割増賃金つまり残業代を支払う一般的な方式と、売上などの成果に応じて歩合給を支払う出来高払制、そしてその組合せによる方式が考えられます。

基本給タイプでは、業務手当などの名目で一定時間分の残業代を固定的に支払うケースがよく見られます。これ自体は違法ではありませんが、実際の時間外労働に対する残業代がこれを上回った場合には、差額を支払う必要があります。

出来高払制においても、時間外労働に対しては残業代が発生しますが、その単価計算は通常の方式と異なります。月当たりの歩合給を月の実労働時間数で割って時間単価を出し、これに25%をかけて残業代を計算します。通常の方式では、残業代は時間単価の125%になりますが、出来高払制では、25%の割増部分以外は歩合給として払い済みであるという考え方です。

出来高払制ですと、時間外労働に対する残業代の割合が相対的に低くなります。ただし、この方式を採用する場合、労働基準法は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と定めています。労働時間の割合に応じて一定額を保障給として支払わせる制度です。

この保障給については、休業手当が平均賃金の6割以上の手当としている関係から、少なくとも平均賃金の60%程度を保障すべきであるとされています。

歩合給と固定給を併用する場合、賃金構成からみて固定給の部分が賃金総額のおおむね6割以上を占めている場合には、この保障給は不要となります。

業種別労務管理のポイント-4


医療・介護サービス業の労務管理(1)
医療、介護の現場では、日をまたいで連続16時間などの長時間勤務を行うことが珍しくありません。この場合、たとえ8時間勤務を2日間にわけて行う場合でも、変形労働時間制を取らない場合は、8時間を超える部分について時間外割増賃金が必要になります。

このようなケースでは、1カ月単位の変形労働時間制で対処することが効果的です。1カ月単位の変形労働時間制とは、1カ月を平均して1週40時間以内の範囲であれば、1日8時間、1週40時間という労働時間の規制を超えて労働させることができる制度です。この制度で運用した場合は、合計労働時間が週平均40時間以内に収まっていれば、連続16時間労働であっても、原則として時間外割増賃金は発生しません。

同じ趣旨の1年単位の変形労働時間制は、製造業などで多く採用されていますが、1日の労働時間の限度が10時間と規定されています。連続10時間を超える労働時間を設定する必要がある医療・介護に係る労働時間制としては、採用することができません。

また、医療や介護の現場では、医師や看護師、介護に係わる職員が不足しており、長時間労働を余儀なくされている実態があります。業種にかかわらず、長時間労働と脳疾患、心臓疾患については、関連性があると判断されますので、時間外労働の長さによってはそうした疾患が労災認定される可能性があります。時間外労働が1カ月当たり45時間以上を超えると、長時間労働と発症との関連性が指摘され、80時間、100時間となるとその関連性が強いと判断されます。最近では、精神障害を発症する労働者も増加しており、これについても過重労働との関連が指摘されています。

長時間労働の緩和と、体調不良者に対して、医師による面接指導を受けさせる体制の整備が、医療・介護サービス業をはじめ、あらゆる業種で求められています。


医療・介護サービス業の労務管理(2)
滋賀県内のある病院が、医師の時間外労働に対して、時間外割増賃金つまり残業代を支払っていなかったとして、今年4月、労働基準監督署から是正勧告を受けました。これは新聞紙上でも取り上げられ、話題となりました。

医師であっても、労働基準法に規定する管理監督者の要件に当てはまらなければ、残業代の支払いが必要になります。その要件として、経営者と一体的な立場にあるか、出退勤について自由裁量権があるか、賃金等の待遇がその地位にふさわしい内容であるかが問われます。医師の場合、賃金等の待遇については十分であっても、経営者と一体的な立場にあるかどうかという点で、管理監督者の要件から外れる場合が多いと考えられます。

医師に対する残業代の支払いは、これまでほとんど問題にされてきませんでしたが、今回のケースをきっかけとして、行政の対応も厳しくなるでしょう。医師版の「名ばかり管理職」問題です。

医師の給与は、年俸契約が多いと思われますが、残業代を毎月定額で支払うという方法もあります。つまり、一定額の残業代を年俸額に含めて総額を決め、毎月支給する方法です。ただし、実際の時間外労働による残業代がこの金額を上回る場合には、その差額を支払う必要があります。

一方、現状の合計金額のまま、本給部分と残業代の定額払い部分に内容を区分けするのは、実質的に賃金引き下げ、すなわち労働条件の不利益変更となりますので、説明を尽くし、個別の同意を得た上で行うべきです。

また、医師については、雇用契約の内容や服務規律のあり方も他の職種とは異なるケースも多いため、医師専用の就業規則を策定することが望ましいと考えられます。


医療・介護サービス業の労務管理(3)
医療・介護サービス業は、人事労務管理が非常にむずかしい業種であると思われます。

医師、看護師、薬剤師、介護に係わる職員など、複数の職種のスタッフから構成され、勤務時間も不規則かつ長時間になりがちです。

賃金体系も、労働市場において、職種別の相場ができあがっており、人材難を反映してその単価が高騰しています。ただし、介護に係る職種については、介護保険の制度上の問題もあり、相対的に低賃金となっています。

医師や看護師、薬剤師などは、時間単価も高いため、その専門職でなければできない業務に特化させることが重要なポイントです。そのために、職務分掌、やるべき業務、やるべきでない業務を明確にする必要があります。また、これらの専門職については、世間相場により採用した場合、既存の職員との給与逆転現象が起きてしまうことがあります。組織内の賃金が不整合になった場合、それを長期間放置しておくとモラールダウンにつながりますので、評価により降給を含めた賃金改定を行う評価制度・賃金制度を構築しておく必要があります。

また、世間相場も変化しますので、上がりすぎた賃金は、評価にかかわらず下げざるを得なくなる場合があります。不利益変更は、個別の同意なしにはむずかしい面がありますが、就業規則(賃金規程)へ「賃金水準が世間相場から著しく乖離した場合、引き上げ、引き下げを行うことがある。」等の規定を置くことが望ましいと考えられます。

これらの専門職の場合、職業柄プロ意識が強いので、賃金水準だけでなく、学べる機会が多いかどうかが採用、定着においてポイントとなります。適切な教育プログラムを設けることが、サービスレベル向上だけでなく、人事労務管理上も重要な要素となります。

業種別労務管理のポイント-3


小売業の労務管理(1)
労働時間の原則は、1日8時間以内かつ週40時間以内ですが、常時10人未満の労働者を使用する商業(小売業など)、映画演劇業、保健衛生業、接客娯楽業については、例外があります。この場合、1日の労働時間の上限は8時間で変わりませんが、週の労働時間は44時間まで可能となります。週6日働くケースでは、一日7時間20分でちょうど週44時間となります。ただし、変形労働時間制を採用する場合は、この例外は適用されません。

小売業は、店を開けている間は誰かが接客対応する必要があります。通常の労働時間では店の空き時間をカバーできないため、早番遅番を設けて対応しているケースもありますが、休憩時間の効果的な設定で全体の労働時間をコントロールする方法もあります。

休憩時間は、1日の労働が6時間を超える場合、労働時間の途中に合計で45分以上与えなければなりません。8時間を超える場合は、1時間以上となります。また、休憩は、事業場ごとに一斉に付与することが原則となっていますが、これにも例外があります。業種が、運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保険衛生業、接客娯楽業、官公署の事業に該当する場合は、休憩の付与を一斉に行わなくてもかまいません。小売業もこれに該当します。

スーパーマーケットなどでは、営業時間の長時間化が進んでおり、正社員で開店、閉店の業務を行わなければならないという理由で、労働時間が非常に長くなっているケースがあります。その対策として、業務の途中で、繁忙の時間帯を避けて交代制による長めの休憩時間を設定する方法があります。これにより、実質の労働時間を短くすることができますが、その場合、就業規則に休憩時間のいくつかのパターンを例示し、交替で取得する旨定めておくことが必要です。


小売業の労務管理(2)
小売業では、パートタイマーの有効活用が業績向上のカギを握ります。小売業の現場は、一般に少数の正社員と多数のパートタイマーで構成され、実際の接客にはパートタイマーがあたることが多いからです。

パートタイマーの有効活用の出発点は採用です。まず、経営者の思い、会社方針、その店舗が目指すものを明確に伝え、それに賛同してくれる人を採用する必要があります。採用難の中で、そんな手順は踏めないという意見もありますが、考え方や波長が合うかどうかは重要なポイントで、その点の確認ステップにもなります。

勤務内容やその条件をできるだけ具体的に伝えることも必要です。入社後の意識ギャップ、つまり「こんなはずではなかった」という感情が、早期退社の最大の原因になります。

また、簡単なものでいいので、筆記試験を行うべきです。ハードルを乗り越えて入ったという達成感が生まれますし、採用を見合わせる場合でも、面接だけで落とすよりも会社に対する悪感情が残りにくいという効果があります。

採用後は、間髪を入れずに研修を行わなければなりません。最初からルールとして徹底しておけば何でもないことでも、あとから修正するのは大変な労力が必要となります。

研修では、仕事の心構えや、業務内容、身だしなみ、職場のエチケット、あいさつ、言葉づかい、接客態度などを具体的に伝えます。接客サービスレベルに正社員とパートタイマーの違いはありませんので、要求水準は決して低くすべきではなく、行うべき事項、知っておくべき事柄を明確にしておく必要があります。そしてそれらの要求事項に対して、定期的に評価を行うべきです。要求事項が明確で、それに対して的確に評価が行われた場合、パートタイマーは、大きな戦力となります。

業種別労務管理のポイント-2


卸売業の労務管理(1)
卸売業の労務管理上の課題として、長時間労働と残業代の未払いの問題があげられます。

卸売業では、一般に営業社員が多く存在します。営業職に対しては、卸売業に限らず、事業場外労働が多いという理由で、定額の営業手当等を支払うことで、残業代を支払っていないケースが見受けられます。確かに、事業場外労働に関しては、みなし労働時間制の適用が可能ですが、この適用には、「労働時間を算定しがたいとき」という前提があります。

現在では、携帯電話が普及していますので、労働時間を算定しがたいという前提にやや無理があります。また、このケースでは事業場外、事業場内あわせて所定労働時間働いたとみなしますので、通常所定労働時間内に業務が終わらないことが多いケースでは、適用に無理があります。

残業が前提の場合、労使協定を結んで、「当該業務の遂行に関して通常必要とされる時間」を定め、この時間働いたとみなすことも可能です。しかし、「みなす」ことができるのはあくまでも事業場外労働分であり、全体の労働時間については、事業場内労働分と合算する必要があります。

いずれの場合も、みなし労働時間制で処理するには無理があると考えられます。

一方、営業手当等を残業代に充当するためには、賃金規程にその旨を明確に位置づける必要があります。つまり、営業手当は残業代として支払うこと、そして実際の残業代が営業手当を上回った場合は差額を支給することを規定する必要があります。

残業代の支払いについては、時間外労働を明確に把握して、それに対して法定通りの残業代を支払うこと、成果や業務の効率に対しては、評価を行い、賞与の支給や昇給で差をつける方法が現実的と考えられます。

卸売業の労務管理(2)
卸売業を営む事業所は、平成16年に約37万ありましたが、平成19年には33万となり、この3年間で約4万事業所が減少しています。しかし、販売額の合計はむしろ増加しており、強い企業への集中が進んでいると考えられます。

卸売業における営業職の人事評価については、厳しい経営環境を反映して、成果・業績を評価することが中心になると思われます。具体的には、売上高や粗利益額、売掛金回収などの項目が考えられます。

しかし、最終の成果・業績だけを求めすぎると、社員の行動が短絡的になり、かえって持続的な成長が阻害される結果をまねきかねません。むしろ、やるべきプロセスを明確にして、その業務プロセスを確実に遂行した社員の評価を高くすることで、会社全体の成果・業績を上げていくことが可能になります。

その業務プロセスは、顧客への訪問のしかた、提案書の作成方法とタイミング、プレゼンテーションの方法などで、行うべき手法を会社が定義し、それを実行したときに高い評価を与えるのです。つまり、業務プロセスの標準化を行うわけです。

もう一つ大切なことは、営業活動を営業社員が属人的に行うのではなく、組織としてその進行をマネジメントしていくことです。そして、営業支援機能を別に持ち、営業社員が付加価値の高い分野に専従できる体制を整えることが必要です。例えば、顧客とのアポイントや、提案書、見積書の作成などは別の営業支援担当社員が行います。

営業プロセスをマネジメントしながら、営業社員という人的資源を、最も付加価値を生む分野に効率的に投入することがポイントになります。

当社コンサルタント

西川幸孝

(株)ビジネスリンク代表取締役
代表経営コンサルタント
中小企業診断士
特定社会保険労務士

小島宏之

(株)ビジネスリンク
シニアコンサルタント兼
(株)財務支援研究所
代表取締役
税理士

佐藤 誠

(株)ビジネスリンク
主任コンサルタント
社会保険労務士
1級ファイナンシャル・
プランニング技能士

眞地 辰宗

(株)ビジネスリンク
コンサルタント兼
(株)財務支援研究所
コンサルタント

林 哲郎

社会保険労務士
中小企業診断士
1級ファイナンシャル・
プランニング技能士
日本FP協会認定CFP(R)
相続診断士
NPO生涯学習
キャリア・コンサルタント
(株)ネクサス代表取締役
ネクサスマネジメント 代表


協力コンサルタント
伊村智史
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伊村智史

経営コンサルタント
中小企業診断士

後藤吉孝
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後藤吉孝

人事コンサルタント
(有)東海マネージメント
代表取締役
産業能率大学委嘱講師

野田さえ子
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野田さえ子

中小企業診断士
海外人財ネット 代表

平野喜久
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平野喜久

中小企業診断士
シニア・リスクコンサルタント
ひらきプランニング株式会社
代表取締役
NPO東海リスクマネジメント
研究会・理事

松井督卓
人物紹介

松井督卓

経営コンサルタント
中小企業診断士
マツイ・マネジメント・
オフィス代表

宮道京子
人物紹介

宮道京子

医療経営コンサルタント
生命保険コンサルタント
教育コンサルタント
マネジメントオフィス
ソエル代表
株式会社シーマインド
代表取締役

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